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「大統領と小さな孫」

仕事場へ行って知ったけど、今日は敬老の日だったんですね。。。
社会の為につくしてきた老人を敬愛し、その長寿を祝う日が
敬老の日だそうな。

それと関係あるような〜、ないような〜、
ある老人とその孫についての物語についてレビューしたいと思います。

タイトルは「独裁者と小さな孫」です。



2014年に公開された映画で、監督はモフセン・マフマルバフ。
主人公である大統領をミシャ・ゴミアシュヴィリ、
その孫を演ずるのがダチ・オルヴェラシュヴィリ。

ダチくんは5歳で、本作が映画デビュー。
愛くるしい表情がとにかく切ない男の子です。


<あらすじ>

舞台はとある独裁国家。
民衆暴動によって大統領が築いた独裁政権は瞬く間に崩壊。
亡命する後妻や娘から一緒に亡命を勧められるも、大統領は
遊び友達のマリヤと離れるのを嫌がった孫息子とともに
首都へ戻ろうとする。だがその途中、大統領とその孫を乗せた
車は暴徒に襲われる。首都はすでに陥落していたのだ。
急ぎ空港へと引き返すも、頼りにしていたはずの元帥に裏切られ、
護衛が銃で撃たれ死んでしまう。車もやがて燃料付き、運転手も
逃げてしまう。大統領は逃げ込んだ理髪店の店主から服を奪い取ると、
旅芸人に姿を変えて、孫と逃避行をはじめるのだった…。



<感想>

とにかく孫を演ずるダチくんの姿が良い★★★★★

彼の存在が、この物語に”悲哀”を与えているのだと僕は思うのです。

物語が進むにつれて、大統領がいかに国民の反感を買っていたかが
断片的に語られていきます。いつか政権を復活させることを考え、
大統領は何も知らない純粋無垢な孫を連れて方々を逃げてまわりますが、
その道中で出会い、見て来た人の姿によって、自分がこれまで行なって来た
所行について考えるようになります。


略奪を働く兵士、彼らに強姦される花嫁の末路、
大統領の息子夫婦を暗殺した政治犯がわが家で目の当たりにした絶望…。


逃避行の中に織り込まれる挿話は––どれもその根源は大統領にあるわけです。


さて、孫は大統領から「これはゲームだ」と言われ、大統領を”大統領”と、
自分のことを”殿下”と呼ばれることを禁じられます。ふたりはただの祖父と孫として
逃避行を続けるわけですが、幼い孫にはその意味が分からない。
だから彼は途中で何度も、どうしても”大統領”と呼んでしまうんですよね。


音楽に乗せて孫が踊る場面で、独裁政権崩壊前に宮殿における遊び友達と
過ごした日々がフラッシュバックするところもまた切ない。



監督によると、この孫は独裁君主の中に潜む純粋さと見る事ができるそうです。
大統領だって小さいときはこの孫と同じように純粋無垢な子どもだった。
生まれたときから独裁者なんていないのです。だがどこでどう間違ったのか、
大人になり––独裁者という、人々を苦しめ、そして憎まれる存在へと
変貌してしまったわけです。


そんな、純粋無垢な孫から、逃避行の中で様々な質問をされる大統領。
孫の質問がまたエグい。質問の内容、その答えを招いた要因はすべて大統領に
あるのです。そして大統領は、孫との会話のなかで自分の罪を実感し、
少しずつ人間へと戻って行くわけですが、世間がそんな彼を許すはずは無い。


ラストの砂浜の場面で出た孫の言葉がすべてを物語っています。
映画冒頭、大統領は自らの権力を示すため、孫の前で大統領の部屋以外の
国中全ての明かりを消すよう命じます。孫はその行いが人々を怒らせたことを
理解し、それをストレートに言うのです。大統領はただ首肯するのみ。
孫によって純粋な心を取り戻しつつある大統領には否定できない、
受け入れるべき事実なのですね。


大統領とその孫はついに民衆と軍隊によって捕まります。
穴蔵(砂に埋もれた土管?)から引っ張り出される大統領の姿は
シリアのカダフィ大佐の最後を彷彿させます。

そうして人々は大統領とその孫を銃殺刑に処しようとしますが、それでは生温いと
絞首刑に切り替え、次は火あぶり、それでは報奨金がもらえないからと
果ては首を切ろうと考えだします。


人々を暴力によって支配していた独裁政権は滅びましたが、
それを滅ぼしたはずの人々が今度は暴力の虜になっているという皮肉。
これは決してフィクションではなく、実際にこれまで何度も起きた出来事です。
(そして悲しいが、これからも起きることでしょう)


古くはフランス革命後に生じたロベスピエールによる恐怖政治、
昨今の例でいうと、”アラブの春”をはじめ、民主化運動直後に発生した暴力の連鎖。

逃避行のなかで知り合った政治犯は必死に、人々による大統領の処刑を止めようとします。
彼は暴力がさらなる暴力を産むことを知っているのです。
それとともに政治犯は、独裁政権があったころに政権の片棒を担いでいた軍隊と、
独裁政治体制に迎合していた民衆を批判します。独裁者ひとりにすべての責任を
負わせて良いものなのか、と彼は言っているわけです。


独裁政治の問題や暴力革命への批判等、政治的な側面が多分にありますが、
本作はシンプルにとれば”罪と罰”の物語ではないでしょうか。


大統領を処刑することでいっぱいとなっている人々の、
「ではどうすれば良いのか」との問いに、政治犯が答えるラストは本当に必見です。

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テレビの仕事で忙しくて更新不定期ですが、のんびりと映画について語っていけたらと思います。

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