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「ヘイトフル・エイト」

2月に入り、ちょっとずつ外も暖かくなってきてますね。
さてさて映画界ではもうすぐアメリカ・アカデミー賞。

今回紹介する作品は、昨年のアカデミー賞において
作曲賞(エンニオ・モリコーネ)に輝いた作品、
クエンティン・タランティーノ第8回監督作、
「ヘイトフル・エイト」を紹介します。



雪山にある小さな山小屋で繰り広げられる密室劇。
出演に サミュエル・L・ジャクソン、 カート・ラッセル、
ジェニファー・ジェイソン・リー、 ウォルトン・ゴギンズ、
デミアン・ビチル、 ティム・ロス、マイケル・マドセン、
ブルース・ダーン、チャニング・テイタムと名優ぞろい。
(そしてキャストのほとんどがタランティーノ組常連!)


本作の製作前に脚本流出騒動があり、タランティーノは製作を一度は断念したが、
流失した脚本を使った朗読劇の反響を経て製作に踏み切ったという。

70ミリ・ウルトラパナビジョンによる映像(とくにオープニングの美しさ)は圧巻!!
脚本の妙、役者の演技力、カメラワーク、美術、
そしてモリコーネによるスコア…。そのどれもが素晴らしい作品です。


<あらすじ>

南北戦争終結から数年後のアメリカ・ワイオミング州。
レッドロックの町へ賞金首の遺体を運ぶ途中に雪で立ち往生を受けた、
元北軍少佐で賞金稼ぎのマーキス・ウォーレンは、通りかかった駅馬車を止める。
駅馬車は1万ドルの賞金首デイジー・ドメルグをレッドロックの町へ連行する
途上にあった同じく賞金稼ぎのジョン・ルースの貸し切り。ルースの許しを経て
ウォーレンも駅馬車に乗る。そこへさらに、ウォーレンと同じにように駅馬車への同乗を
求める者が姿を現す。男の名はクリス・マニックス、レッドロックの新保安官と名乗る
謎の男をあらたに乗せ、一行は雪嵐を避けるべく山小屋「ミニーの紳士服飾店」へ向かう。
そこに店主の姿はなく、店主から店を任されたというメキシコ人・ボブ、
巡回執行人オズワルド・モブレー、母に会うため帰省するというジョー・ケージ、
元南軍将校サンディ・スミサーズと、素性の知れぬなぞの人物ばかり。
賞金首であるデイジー・ドメルグは、この山小屋の中に自分の仲間がおり、
自分を助ける為にジョン・ルースの命を狙っていると話す。
誰がデイジーの仲間なのか? 雪嵐で閉じられた山小屋の中、疑心暗鬼が木霊する…。



3時間、という長い上映時間にも関わらず、
そうは思わせないとてもスリリングかつスピーディな展開の作品です。


タランティーノの名を世界に知らしめた「レザボア・ドッグス」と
同じように、密室の中で誰が敵かを疑うこの物語。
登場人物はどれもクセモノぞろいかつ嘘つきで、誰が賞金首の仲間(ギャング)かはわからない。
その展開はジョン・カーペンターの「遊星からの物体X」をも彷彿させます。




ひたすらカート・ラッセル扮する賞金稼ぎジョン・ルースによって
痛めつけられるデイジー・ドメルグ(演:ジェニファー・ジェイソン・リー)が
見せる悪魔のような表情が印象的です。ボコボコに殴られ、何度も血まみれに
なる姿は「エクソシスト」のリーガンのよう。殴られても不敵な笑みをやめない
彼女の演技は、アカデミー賞助演女優賞にもノミネート。
ちなみに劇中で彼女が弾いたギターは1800年代のヴィンテージ・ギター。
カート・ラッセルがギターを割るシーンでは、誤ってレプリカではなく
そのヴィンテージ・ギターが割られてしまったそうな。。。




そんな二人の駅馬車に乗り込む主人公を演ずるは、
タランティーノ作品の常連サミュエル・L・ジャクソン。
なんと現在、御年68歳だとか!?
そんな彼が扮するウォーレン元少佐も、主人公だけども色々と怪しい感じのキャラ。
彼はリンカーンから貰った手紙を肌身離さず持っているが、その手紙は
自分の身を守るための”嘘”。彼もほかの登場人物と同じように嘘つきで、
そして映画タイトルがあらわすように、心の中に”憎悪の念”があります。
(その憎悪は劇中の誰よりも先に、ある形であらわれる)




本作はいちおうジャンルとしては「西部劇」と呼んでいいはずですが、
銃撃シーンは控えめで、ひたすら山小屋での会話劇が繰り広げられます。
(これがなかなかにウィットに富んで面白い!)
それにしても登場人物のクロース・アップは、監督がリスペクトする
セルジオ・レオーネの映画を思い起こしますね。




そんな本作はセルジオ・レオーネの盟友であるエンニオ・モリコーネが作曲を担当。
実はタランティーノは以前よりモリコーネに自身の監督作品の音楽を依頼したかった
そうなのですが、本作においてようやくその念願が叶ったとのこと。


冒頭から流れるテーマ曲は映像も相成って、圧巻!







さて…登場人物ひとりひとり、そして脚本などそのすべてが魅力的でありますが、
本作を見るにあたって、その当時の時代背景=南北戦争というものについて
ある程度知っていたほうが面白く見られるのではないかと思います。


南北戦争(1861-1856)とは、ざっくり言うと
アメリカではじめて行なわれた、アメリカ国内を2分した戦争のこと。

アメリカは建国して以来、黒人を奴隷として扱ってきた。
その奴隷制に反対の意見を持つリンカーンが大統領に就任したことで、
奴隷制を支持する南部の複数の州(後の南部連合=南軍)がアメリカ合衆国から離反。

当時のアメリカでは奴隷は白人の私有財産であり、
多くの奴隷を持つということはその個人の財力の証でもありました。
(「ジャンゴ」でレオナルド・ディカプリオ演じた金持ちの悪党がまさにその典型ではないでしょうか?)

そんな奴隷制の廃止は、奴隷を持つ者たちにとって、
また奴隷で財を成した者にとってマイナスにほかならない。
そこで反リンカーン体制が生まれたのです。
(といっても、リンカーン自身は奴隷制廃止など公約に掲げてなかったそうですが…)

サムター要塞と呼ばれる場所での戦闘がきっかけに、リンカーンを支持する北部・北軍と
南軍との間で戦争がはじまりました。開戦当初はすぐに終わると思われたこの戦争は
瞬く間に激化し、南北含め60万近くの人々が戦火の犠牲となったといわれます。

結果はリンカーン率いる北軍の勝利と終わりましたが、
では北軍の勝利で黒人の地位は変わったのか・・・?
自由・平等がもたらされたのか?

残念ながら今現在も黒人はアメリカ社会において差別対象と見なされ、
ヘイトクライムの犠牲となる方も多くいるといいます。
黒人初の大統領、バラク・オバマの治世の中でも。
もちろん100年以上前に比べれば、その社会環境もある程度は
改善されたのでしょうが。。。

そして本作の背景となる、南北戦争終結直後の時代です。サミュエル・L・ジャクソン演じる
ウォーレンが持ち続ける”リンカーンの手紙”とは、黒人である自分自身を、
白人優位社会における”憎悪”から身を守る為の術というわけです。

本作は一級のエンタテインメントでありながら、
そこに、これまでのタランティーノ作品とは異なる、
あるいはそれ以上に「政治性」というものがみられるのです。

また、「政治性」を考える上で忘れてはならないのが、
保安官と名乗る男クリス・マニックス(演:ウォルトン・ゴギンズ)の存在です。
彼の父親はマニックス略奪団という、南軍くずれの悪党を率いた頭目の息子。
黒人も多く虐殺したという一味の息子と、黒人の元北軍少佐。

直接的ではないが敵味方の関係であり、憎しみ合う関係にある二人。
(憎しみの対決はサミュエルvsブルース・ダーンという形で直接的に描かれていますが)

その二人の中である種の友情めいたものが生まれる展開には、
この作品がたんなる残虐な、憎悪の映画ではないというメッセージの
ようなものを感じることもできるのです。




「イングロリアス・バスターズ」以来、
タランティーノの作品にはどことなく昔のアメリカ映画のような
大作的な色が出るようになりましたが、本作はアメリカの伝統とも呼べる
「西部劇」という枠の中に様々なものをつぎ込んだ作品といえます。



なんでもタランティーノは10作目を撮り終えたら監督業を
引退するそうですが、そんな彼は次にどんな作品を生み出すのでしょうか。。。
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Author:ヤブサキユウ
テレビの仕事で忙しくて更新不定期ですが、のんびりと映画について語っていけたらと思います。

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